2009年1月12日月曜日

イスラエル軍が「白リン弾」使用

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ地区侵攻で、「非人道性」が指摘されている「白リン弾」を使用している可能性が高いと指摘しました。AFP通信によれば、ガザの病院の医師が、「白リン弾で少なくとも民間人55人がやけどを負った」と証言しました。
 白リン弾のリンは「燐」で、空気と反応して発火、発煙します。ざんごうの敵兵をいぶり出したり、対戦車砲に対する煙幕として有効とされていますが、消火が極めて困難なことや、人体への被害が大きいことから「人間を焼き尽くす兵器」とも言われています。国際条約で明示的に禁止された兵器ではなく、化学兵器ともみなされていませんが、皮膚に触れると骨を溶かすほど激しく燃焼し続け、人体に深刻な被害をもたらすのが特徴です。第二次大戦の空爆などにも使用され、米軍が2004年にイラクで、イスラエル軍も2006年のレバノン侵攻で使用しています。
 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、世界で最も人口密度が高い地域の一つであるガザ地区での白リン弾使用は、国際法に違反する可能性があるとし、イスラエル軍に同弾の使用停止を求めています。HRWは、白リン弾を焼夷(しょうい)弾と位置付け、人口密集地にある軍事目標や、民間人を焼夷兵器で攻撃することを禁じた「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)第3議定書」に違反する疑いがあるとし、市民被害最小化の予防措置をとるべきだとする国際人道法の義務に反する、と強調しています。イスラエル、米国ともCCW第3議定書を批准していません。
 白リン弾は 現在は主に、発煙弾として使われているが、その使用の是非を巡って論争があり、元英軍少佐の軍事専門家、チャールズ・ヘイマン氏は英タイムズ紙(5日付)に「故意に市街地に投下すれば、国際刑事裁判所行きだ」と指摘しています。
 戦争とはこのようなもので、戦争による技術の進歩は、殺傷能力を競う悪魔のささやきのようなものです。人を殺すことに正義も大義名分も何もありません。かつて日本は、2004年11月にイラク西部のファルージャ攻撃で白リン弾を使用し、多数の市民に被害を出した戦争を応援していました。
 かつての大戦は、天然資源をめぐってのもので、利害が絡んでいるものです。原油価格が下落すると中東で紛争が起きるような気がして、これは考えすぎでしょうが、戦争に決して正義はありません。日本からは遠い場所での話ですが、決して目をそらしてはいけないことだと思います。